観光客に心から満喫してもらう社会・会社づくり

(27)日本の社会構造を横のネットワークに

まず、これから「共栄共存社会」を進めていく上で最も問題なのは、政府・日銀が大量に印刷した紙幣が金融市場に投入され、住宅バブルでタワーマンションなどが過剰に建設されたことです。

健康を維持するのに必要な「持続可能性という価値観」で未来を考えた時、日本の大都市には健康ではいられない場所がたくさんあり、継続して生活できなくなるほど環境が悪化しています。

だからこそ、乱開発された場所を取り壊し、不要となった構造物の解体撤去や土壌や川、海の浄化、針葉樹から広葉樹への植林のやり直しなど、徹底した防災対策が必要となります。そのためには、バブル崩壊後の金融緩和を禁止することしかありません。

1964年に開催された東京オリンピック以降、日本は近代化の方針のもとで土地開発が始まりました。環境を破壊し続けきたこの約60年によって、大地震や大津波が襲ってくれば全て倒壊する可能性があります。

また、国土の安全対策を考えると近年多発する大規模な自然災害に対して、都市も地方も依然として大きな危険にさらされている場所が多いということに、改めて驚かされます。こうした「大掃除」と「安全対策」には多額の費用と多くの人手が必要になります。

例えば、全国にある商店街がイオンモールに対抗し、横のネットワークを組みながら動いていくだけでは大きく代わることはないと思います。結局、新しいインフラを構築できるのは政府や自治体による資金提供と事業計画です。

東京オリンピック開催直前の1964年に開業した東海道新幹線は、東京=大阪間の移動時間を従来の半分に短縮しました。その後の日本経済の発展に大きな貢献をしたことは誰の目にも明らかです。

2030年は、新函館北斗=札幌間の移動時間が1時間を切る「北海道新幹線」が開通する予定です。しかし、経済にはボトルネックという言葉があって、全体のシステムのなかで問題を抱えている特定の場所が全体の成長を阻害している場合があります。

これから日本でボトルネックになってくるのが、小氷河期による国土の寒冷化です。さらに、環境問題やインフラの劣化という危険が待ち構えています。2030年まで日本列島を浄化するために、日本人一人ひとりが考え、解消していくことは重要なことです。

(28)本当の意味での観光地を目指す札幌

世界的な感染拡大の影響で、日本に訪日外国人観光客が来れなくなりました。そして、町おこしイベントである各地域の祭りも全面中止となり、解除された後に自力で立ち直れない自治体が出てくる可能性があります。

ご存知のように、感染症や治安の問題などを考えていくと、比較的安定している日本に移住したり旅行に来る外国人は今まで以上に増えてくると思われます。ただし、発展していくのは東京や大阪などの大都市ではありません。

地方、しかも過疎や不況で疲弊しかけている地域が注目されていくということです。「観光」を英語に訳すと「sight seeing」ですが、「景色を見る」という意味になります。つまり、名所や娯楽施設などに外国人を呼び込み、カネを落とさせることではないということです。

パリやバルセロナのような人気の観光地では、現地に住む人たちが食べる郷土料理や着ている服、建築物などの文化を観光客が満喫しているのがわかります。要するに、生活や文化、生活習慣から「観」えてくる「光」が観光資源そのものであると言えます。

観光というのは、必ずしも観光地を見に行くだけではなく、企業視察や文化交流なども観光と言えます。前向きに仕事に取り組んでいる企業を訪問し、そこで働いている人たちから「観」えてくる「光」を感じることができるというわけです。

視察内容よりも、日本人が光り輝いて働いているのを観ることでモチベーションが湧いてくるということです。だから、決して有名な観光地を訪れることだけが観光ではないことがわかります。コロナ後は、観光のための設備投資が必要なくなります。

大事なことは、日本各地に住む私たちそれぞれの衣・食・住を観光客に経験してもらい、これからも自分たちが住み続けられるように、「特産物」や「名物」としての産業を確立させることです。

そういう意味で考えると、2030年の冬季オリンピック開催を目指す200万人都市の札幌市は、英語や外国語を多くの住民が使えるようにしておくことが特産物や名物になる可能性が高いと思います。

札幌は、ミュンヘンやミルウォーキーと並び、世界三大ビールの産地と呼ばれています。なぜかと言えば、北緯43度は発酵食品を生成するのに適しているからです。当然、バターやチーズ、日本酒などにも適しています。

近年、世界中の人々が北海道ブランドに注目する今、新たな産業や企業誘致などを積極的に進め、地域の人材開発に必要な教育レベルを上げていくことも必要です。観光地である北海道を整備し、景観を復元することで失われた蝦夷地の良さを世界中の人々に楽しんでもらいます。

それには政府や自治体、市区町村の助けが必要であり、資金や人材、ノウハウを得るために各地域の要望に沿って全面的に支援していくしかありません。その地域の衣食住が確立していけば、必ず他の地域から観光客が訪問してきます。

(29)英語や外国語で地域おこしを始める

観光産業は、多くの雇用を生み出す特徴があり、地域の雇用拡大にも貢献をすると思います。ただし、外国人観光客相手には英語か中国語のスキルが求められます。これまでもたくさんの外国人客が来ましたが、本当の意味でのコミュニケーションは取れなかったわけです。

まずは、「地域おこし」から始め、小さな成功を積み重ねることで自信が生まれ、その地域の衣食住を満喫する人が出てくると、同時にその地域が観光地になっていき、日本中にすばらしい観光地がいくつも生まれていくことが期待されます。

北海道で言えば、アイヌ民族の暮らしぶりや松前藩の歴史、野生動物のウオッチング、美味しい魚介類や穀物、ラーメン屋や回転ずし店の食べ比べでさえ観光旅行になります。コロナ後は、これまで以上に各地の名所や旧跡が観光資源になりえると思います。

初夏から秋にかけて全国的な経済交流が旅行を通じて広まり、冬から春にかけてはスキーリゾートを満喫してもらうことができるわけです。これから、観光産業と語学教育はもっと大きく成長する分野であるように思います。

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09.自分自身で考えることができようになる社会・会社づくり