企業理念 プラウト主義型企業を目指してAtlasができる未来のための社会貢献
プラウト主義(進歩的活用理論)社会とは? ②

 

合理的分配

 

合理的分配とは、米国の経済学者ラビ・バトラが著書などで提起しているプラウト政策の観点です。

国民総所得(GDP)を分割する際、誰でも自由に好きなだけ持てる者は持てるだけ持てるという貧富の差の拡大を野放しにするような不平等な分配や、それとは反対の勤勉かどうかにかかわらずみんな均一に平等に分配するといった完全な平等(悪平等)分配とは違います。

合理的分配とは、一人一人が最低限必要な衣・食・住・教育・医療を十分まかなえるだけの所得が分配されるべきである、という考え方で政府はこのレベルの維持に必要な所得額をしっかり計算し、その根拠に基づいて法定最低賃金を設定すべきであるとしています。

そして、勤労者の労働力の価値や質や努力の高低に応じた報酬額の変化という意味での賃金の差の存在はむしろ好ましく、その根拠とは無関係なくその本質が資本家搾取的な動機に基づくものでしかないものによって作り出された極端な賃金格差(例えばアメリカでの企業に見られる、平社員と社長との間の甚だしい賃金格差のような)の存在は無くすような政策を取るべきであるとし、バトラはその最低賃金と最高賃金の差の適正レベルは、人間の脳が通常では10%程しか使っていないということを例にとって「10倍ぐらいが好ましいのではないか」、と提言しています。

これは機会均等の観点の政策でもあり、バトラは次のように述べています。「プラウトは平等の名のもとに、怠け者を擁護する思想ではありません。働かない人間でも社会保障によって生活ができるというのは、経済的民主主義とはいえません。この点では北欧型の社会福祉国家とは違います。」

プラウト社会では、勤労が奨励されます。そのためには、より多く働いたものがより多くの報酬を得る経済でなければなりません。共産主義はそこを完全に間違えたわけです。だからといって、完全な自由を認めて富裕者が好きなだけ暴利を貪ることが許される社会であってはならないわけです。資本主義の問題はこの点にあります。

「プラウト経済にとって何よりも必要なことは、法律が守られることです。税制が良い例でしょう。世界各国の富裕者の中で、所得税法や相続税法を完全に守っている人物はほとんどいないでしょう。法律の抜け穴を見つけ出しては、脱税や節税に励んでいるのが現状です。むしろ、税金を法の規定どおりに払わなかったからこそ、彼らの多くは富裕者になりえたのです。納税を逃れるために、一部の富裕者は政治家を利用することすらやっています。これが富裕者の支配の実態なのです」

バトラは、累進課税制度もプラウトとして引継いで行われるべき政策であるとも述べています。

 

バブル金融投機経済化の防止
(生産性の上昇に等しい賃金上昇を伴わせる経済政策)

 

バトラは、生産性と賃金上昇の相関にバブル発生・崩壊のメカニズムがあると分析しています。

まず、需要と供給が均衡するためには、(1)生産性の向上によって賃金が上昇するか、または、(2)賃金上昇が鈍い場合には、政府が借入金によって人工的な購買力による需要を創出し、その差を補う、の2つの方法しかありません。 これが「低賃金=需要不足=借入金経済」となり、政府や自治体の借入金はどんどん増加することになります。

この借入金経済に陥ることがバブルの危険信号で、労働者の購買力が低い段階で、経済が少し活況を呈してくると、企業の利益が急上昇します。企業収入が増えるが賃金という支出はすぐには増やすことが出来ないからです。

すると、企業には資金は潤沢に集まるので、余剰資金が株式市場などにどんどん流れ込みます。こうなると経済は、そこそこ活況で株にも買いが入るので、実体経済以上に株価が高騰しはじまります。これがバブルにつながり、いつかは破綻すると指摘しています。

そこでバトラは、生産性に見合った賃金の上昇がプラウト政策としても重要であると述べています。バトラは、かつて1950~1970年代前半までの日本経済はまさにこのようなプラウト的政策が採用されていたと述べています。 この時期は、生産性の指標としての国内総生産(GDP)の伸びに対する税引き後の実質賃金の伸びが平均して70%程度に追いついていました。

しかし、1970年代後半~1993年までは国内総生産の伸びも鈍化する中で、税引き後の実質賃金の伸びもそれ以上にかなり鈍化し足踏み状態になっていました。 この、税引き後の実質賃金の伸びに行くべき生産性(国内総生産)の伸びはどこに消えたかというと、この時期の租税負担率が約54%上昇したことによって消え、残りの約46%が資本や不動産の所有者に高い利潤と賃貸料という形を取って入ったとします。(労働者の賃金上昇に回るべき国の富の一部が、資本や不動産の所有者(資本家)投機的投資活動を通じてその富が奪われたということを意味する)

その原因として、この時期、以前のプラウト的政策はだんだんと放棄され、(特に日本のバブル経済期)は土地不動産への投機(土地転がし)は、株式の投機的運用を通して、ひとつ上の段階へとその激しさを増していき、銀行への規制は撤廃され、それが銀行のコストを押し上げ、ハイリスク・ハイリターン(危険性は高いがその見返りも高い)投機目的の貸し出しに、銀行自体手を染めざるをえなくなりました。政府が金融機関に対するコントロールを緩めてしまった為に、実に多くの資本がこの時期に無駄になってしまったわけです。

現在の世界経済の状況は、かつての1929年の世界大恐慌に匹敵する、100年に一度の金融危機だと言われていますが、 「そもそも、商業銀行(普通銀行)と投資銀行(証券)業務が切り離されたのは、この世界大恐慌がきっかけでした。

20世紀に入って産業と金融が発達してくる中で、金融資本は自分達の利益だけを考えた際限のない投機を繰り返して膨張し始め、銀行業務と証券業務が一体となることで不正な投機的取引が日常的に行われ、それがバブルとなって崩壊したのが1929年10月24日「暗黒の木曜日」以降の株式大暴落、世界大恐慌だったわけです。

その後、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領は、金融システムの抜本的改革を行いました。その手法は、投機的な証券取引を行う人々を市場から排除して、投機筋に代わって政府が金融の中心機能を担うというものでした。

それまで一体だった商業銀行と投資銀行を分離し、商業銀行は個人や企業への貸付中心の金融業務を中心に、投資銀行は証券業務を中心にと厳密に区分けしました。

そして証券取引法などを新たに整備し、証券取引委員会(SEC)を設立、投機的な取引が出来ないシステムを構築しました。 この時、厳しく分離された銀行業務と証券業務の垣根が、市場原理主義の台頭によって1970年代以降、次第に自由化され、最終的には、今回のサブプライム問題とそれに連鎖するあらゆる金融商品の矛盾の爆発によって、「一気に世界の金融が崩壊したというのが今日の状況だ」とバトラは指摘します。

プラウトは、このような金融投機経済の拡大膨張を否定しています。それは、まっとうな労働による報酬としての賃金の減少とそれを供給する実体経済を縮小させ、賃金として供給されるべき富の一部が投機の資本として利用され、投機によって儲けた道徳性の無い富が拡大し、それに関わる資本家だけが裕福となって激しい貧富の差を生み、労働者が報われない道徳性の無い経済社会であるからです。

 

民主主義経済

 

民主主義経済というのは、プラウト政策全体に帯びている民主的な経済の理念を示す表現でもありますが、特に、生産システムについての、主に企業における経営の民主化のことを指しています。

サーカーはこれを協同組合システムに置き換えることで民主化を実現させることを意図し、バトラは現在の資本主義私企業を、社員持ち株制にして経営権を社員(労働者)に移らせることで民主化を実現させようとする、若干のニュアンスの違いがあります。

 

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